木庭顕がマルセル・モース、レヴィ=ストロース、そしておそらくはカール・ポランニーを意識しつつ交換echangeというとき、それはいわゆる「贈与交換」のことであるが、ここで大事なことは、この「贈与交換」が時間の流れの中で行われる非対称的な営みである、ということだ。すなわちそこでは贈る側が先手を取り、贈られる側が受け身となる。これが「交換」である以上贈られた側は返礼をしなければならない。しかしそれは一見、貨幣経済の中での貸借関係のように見えて実は違う。貨幣経済の中での貸借は、貨幣を媒介とした等価関係が明快に定義できるようになっているが、貨幣という尺度が確立する以前の贈与―返礼関係にはこうした明快さが欠けている。性急な一般化は避けなければならないが、このような場合には先手がリーダーシップをとってしまう可能性が高いのではないだろうか。 ポランニーの図式に従うならば、非市場的な取引様式のいま一つの類
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