円城塔(えんじょう・とう)、その不思議な名の作家さんは、不思議なちからをもっているようです。純文学とSFのジャンルを越境しながら、あらすじを語るのが難しい、しかし一文一文が読者を惹き込つけて離さない作品を書き続けています。『道化師の蝶』で芥川賞、『Self‐Reference ENGINE』でフィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。伊藤計劃さんの遺稿を引き継いで書いた『屍者の帝国』は20万部を突破し、今年映画化されます。果たして、ご自身はその不思議なちからのことを、どう考えているのでしょうか。 何よりもまず、名前があ行ではじまる人々に。 それから、か行で、さ行で以下同文。 (『道化師の蝶』) 本のページを開く。と、目の前に文字の連なりがある。それを目で追う、その行為自体が、なんだか楽しい。 ああ、じぶんはいま、言葉を味わっている。大げさにいえば、言語芸術に触れている、という歓びが内側か