「観天望気」 書いた文字を見せながら読みあげると、ハヤさんが首をかしげて言った。 「カンテンボウキ……、これまで使った記憶のない言葉です」 私も同じだった。今日、仕事で気象予報士の人と話す機会があり、仕入れてきたばかりの知識だ。 観天望気とは、自然現象や生き物の行動を観察して、天気を予測すること。 月に暈(かさ)が掛かると雨 きれいな夕焼けの翌日は晴れ 鐘の音が良く聞こえるときは雨 アマガエルが鳴くと雨 ツバメが低く飛ぶと雨 ネコが顔を洗うと雨 どこかで聞いた覚えのある「お天気のことわざ」も、観天望気の一種だ。 「それぞれ根拠があるのよ。たとえば、鐘の音。地上で発せられた音は、上空に暖かい空気が広がっていると、大きく屈折して遠くまで届くから、良く聞こえるんですって。そして、上空が暖かいときは前線が近いことが多いので雨が降りやすい、というわけ」 「なるほど。毎日のように鐘の音は聞こえるし、猫