まさに豊田家に“使用人”のように仕えた奥田だったが、図らずも、自らが社長となった後に野望を抱いた。それは、ある疑念から生じたものだった。 「豊田家は本当にトヨタに必要なのか?」 「創業家とはいえ、創業家に生まれたというだけで社長になるのは、おかしいのではないか……」 たとえば、米フォードモーターの場合、いまだに創業家であるフォード家が、議決権ベースでおよそ40%の株式を保有しているのに対し、豊田家の場合は2%にも満たない。しかし、その影響力は絶大どころか、不可侵の存在にさえなっている。資本の論理からすれば、理解不可能な状況なのである。 奥田の批判の矛先であった豊田家の家長、章一郎は、トヨタを離れ、経団連会長という財界トップの座についていた。しかしその章一郎は、こんな不満を服部に漏らすのだった。 6代目社長・豊田章一郎の素顔 章一郎が経団連会長となって、しばらくしてのこと。中国から帰国してい