世界的な写真家、「アラーキー」こと荒木経惟(のぶよし)さん(69)の愛猫チロが 息を引き取った。享年22のメス。大切に育てられ、人間にたとえると100歳を超す長寿だった。 早世した妻のかわりとなって一人暮らしの荒木さんを精神的に支える一方、 数々の作品にも登場した美人猫で、ファンの間で知らぬ者はいない存在。 荒木さんは「あんなにオレを愛してくれた女はいない」と感謝の思いを語った。 チロが死んだのは2日。3日のひな祭りに荼毘(だび)に付された。棺おけを桃の花で飾り 見送った荒木さんは「焼いちゃって、骨の写真を撮って、ふんぎりついた」と自分に 言い聞かせるようにつぶやく。「家でちょっと目を離している間に静かに逝って。 長い間オレだけのために生きてくれて、ありがとう」 昭和63年。妻・陽子さんがもらってきた子猫に、ネコ嫌いだった荒木さんはたちまち 魅了された。2年後に写真集「愛しのチロ」(平凡社