「教養とは何か」。一見すると不毛な議論になりそうな問いではあるが、これについて考えられる限り考えてみたい。いくつかの議論を参照しつつ、なるべく多様な「教養」観を挙げてみることにするが、特に目新しいことを言うつもりはないので、流し読みしつつ、自分なりに「教養」について考える踏み台としていただきたい。 「教養」とは何かを探るのが難しいのは、そもそも言葉としての「教養」が、定義されないままに比較的自由に使われているからだろう。「教養」はその内容以前に、言葉の意味自体が時代や地域によって異なる。あるいは同じ社会でも複数の意味が混在していたりするが、現代の日本に限っても、その意味は自明とは言えないだろう。 日本における「教養」という言葉は、少々おどろきだが、もともとは"education"の訳語として使われ始めたものらしい。もっとも、それをもって「教養」が「教育」と同じ意味だ、というのは明らかに実感