著: 出来幸介 私はむすこがうらやましい。 半年前に生まれたむすこは、この世のケガレをまだ知らず、きれいなほっぺですやすや寝ている。 私はむすこがうらやましい。行く先々で、みなから声をかけられる。少しばかり微笑むだけで「笑ったぁ!」。その歓声は高くなる。 私にないものを持つむすこ。私はむすこがうらやましい。 葛飾生まれ、葛飾育ち。 そうなるむすこが、うらやましい。 葛飾と世界を結ぶ、ハブステーション「青砥」 大阪生まれ、大阪育ちの私は、大学で東京に出た。しばらくは新宿の外れのシェアハウス、といえば聞こえはいいもののさまざまな国籍の学生・社会人がごった煮のごとく暮らすカオスな空間で暮らしていたが、結婚を機に引越すことになった。 妻の口から、「職場の近くだといいなぁ。葛飾なんだ」と聞いたとき、得体のしれない高揚が私を包み込んだ。葛飾……! 幼少期より『こち亀』をバイブルのごとく愛読し、父が観る