普段はこの手の本はお奨めしないのですが、戦場で死と向き合う男が、故郷に置いてきた妊娠中の妻と幼い息子を思い、やり取りする手紙をまとめたこの本が、凄く訴えかけてくるものが強かったもので。 本来であればネタバレをするべきではありませんが、この本は結末を知ってから読むべきだと思います。手紙の出し手である石田光治少尉は、日中事変へと駆り出された挙句、遠い戦地で戦死してしまいます。 死を悟った石田少尉の悲痛で、それでいて、身を案ずる妻を逆に勇気付けようとする深い愛情には、もちろん心を打たれます。読み進めるだけで、物語が死へと収斂していくことが分かっていながら、ここまで字の温もりを感じさせる強さを感じ、引き込まれるというよりは、真っ白になります。 二度読んでください。そも、石田少尉は戦争の中にあって自らの命を危険に晒し、また、苛烈を極め、戦闘が拡大し激しくなっていく中で失っていく戦友、戦地を守る責任感