”楽しい事なら 何でもやりたい 笑える場所なら どこへでも行く” 青空、ひとりきり – 井上陽水 「来週大分にいくんだよ」 仕事をやめ、ここ一年ほどニート生活を送っている大学の先輩がLINEを送ってきた。 「へえ、何をしに?」 「田んぼだよ、田んぼ。大分には日本の田んぼ界隈において、極めて重要なおかつ美しい田んぼがあるんだよ。これは行かざるをえないんだよ」 先輩はニートであり田んぼオタクであった。どこかに出かけては田んぼを撮ってきて、じつは最近こんな写真を撮ってねと、なんでもない田んぼや鄙びた夏の一コマであるところのあぜの写真などを嬉々としてを見せてくれた。そういう人である。 「田んぼもなかなか奥が深いんですね」 「じゃあ、大分で待ってるから」 「大分……」 「待ってるから…」 「田んぼ……」 「じゃあ、そういうことでよろしく…」 それが、木曜日のことであった。 土曜日の昼、僕は大分にいた