出会いというの物理的条件に規定される。 引越しをして、今まで行ったことのないスーパーで買い物をするようになった。入り口でカゴを取り、あ〜今日なに買って帰ろうかななどと考えながら数歩あるくと、冷蔵の棚に物静かに、しかし確固たる存在感を持って、厚揚げが鎮座しているのだ。 まだ入店数歩、スーパー回遊の序の口である。このようなタイミングで例えば、いきなり肉がボンと出てくるのであれば、え、肉か、肉ね、何に使うべきだろうなあ、そうだな……などの逡巡が発生してしまう。しかし厚揚げはすでに加工品なので、特に何も考えることなくカゴに放り込むことができる。なんとも絶妙な位置にちょこんと厚揚げが置いてあるのだ。 何の気なしにつかまえた厚揚げなのだが、これが、夜中に大変素晴らしい力を発揮する。基本的に豆腐なので、なんとなくヘルシー風でありながら、油気もあるので、食べたなという気もする。豆腐でいいじゃないかという声