アニメ『輪るピングドラム』小説版の「上」の古書を、アマゾンで購入して読み始めてみたが、村上春樹『1Q84』を読んだ直後ということもあり、恐れていた通りかなりがっかりさせられた。 アマゾンの商品説明には「原作小説」とあるが、アニメの放送開始に先立つこと、ほんの数日前の発売であり、アニメの脚本より小説が本当に先に書かれたとは考えづらい。 上巻の4分の1ほどを読んで分かったのは、これは小説ではなくアニメ脚本の下書きである、ということだ。 アニメ版『輪るピングドラム』はご覧になった方はお分かりのように、幾原邦彦の原作らしい前衛的で抽象的な表現が散りばめられた作品だ。 例えば有名な「生存戦略!」のシーケンス。主人公の少女・陽毬がペンギンの帽子をかぶって「生存戦略!」と叫ぶと、アニメの上では現実の世界が一瞬にして隠喩的な異空間に切りかわる、という演出になっている。 これを小説で書く場合、本来なら文体