小女子ハ酒ノ肴也。 焼イテ美味、炒メテ美味 画図百鬼夜行――前篇・陽 其の日京極堂を訪れたのは、没になった原稿を読んで貰う為であった。 没になったといっても、記事の内容が悪かったというわけではなく、私が原稿を書いていた雑誌『m9』が休刊になったのだ。私は暮らしに窮した時に、内職としてカストリ雑誌に記事を書き、糊口を凌ぐことがあり、『m9』もそうしたカストリの一つだった。『m9』とは主に、社会、政治、文化、といった堅い主題を、若者に目に向けて貰おうと、軽い論調で書こうといった雑誌であったが、志半ばにして三号で休刊になってしまった。 このことで、編集者は何度も頭を下げてきたが、今回は原稿の内容に自信が無かった為、ほっとしたというのも事実である。 雑誌が休刊になれど、書いてしまった原稿は手元に残る。そこで私は今回の原稿――インターネット上の殺害予告を扱った記事を京極堂に読んで貰おうと考えたのだ。