JR西船橋駅から、円のある行田団地方面に向かう。駅前のターミナルから、行田団地行きのバスが出ていたので、それを使えば数分で着くはずだ。しかし、バスには乗らなかった。心の準備ができていない状態で、円の中にうっかり侵入してしまうことを恐れたからだ。 何を恐れることがあるのかと言われるかもしれないが、円である。巨大な真円に魔法陣的な呪術性を感じるのは私だけだろうか。もし、行田の円が魔法陣的な力を(その意図がなくても)帯びていたとしたら、円の内部にバスで乗り入れることは異界への門をくぐることに等しい。船橋市民は日常で円に触れているから、平然としていられるが、私のような他所の者が円に入った場合、どうなるか保証はない。それなりの覚悟がいる。 「円に入る前には、一周してから」という儀式を勝手に作って行うことにした。この儀式に効力はないだろう。気持ちの問題である。しかし、そうせずにはいられない圧力が曇天の