「埼玉の起源というのはだね、どうも、行田にあるらしいんだよ」いつだか忘れたのだが、酒を飲んでそんな話をした。 「お、我々の埼玉ですか」僕も加藤も埼玉出身だった 「そう、我々の埼玉だよ。埼玉への気持ちを取り戻す時が来ているのではないか、そう思うのだよ」僕は冗談なんだか、本気なんだか自分でもよく分からずに言った。 「いいですね、行田、行きますか!」 というかんじの調子で、仕事終わりの金曜日に、あらゆる些末な計画を棚上げにして、埼玉の名の起源を探しに車を出すことになった。上の会話をした大学の後輩加藤が車を運転してくれることになった。 後部座席には、これまた大学の後輩の山田が乗っていた。山田は並々ならぬチェーンスモーカーだった。車を途中で止め、喫煙可能な場所を見つけるやいなや、まるで長い時間、潜水を強いられていたのような顔つきで、手早く火をつけると、うまそうにタバコを吸っていた。 「埼玉に何をしに
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