この長いテキストについて、すべてを論じるのには時間がかかるし、それなりの準備も必要になるため、今回は、ひとつだけ要点をぬきだして書いてみたいです。それは、「全体主義は大衆運動であり」「指導者たちは、プロパガンダによって人為的に作られたとは言えない本物の人気を享受していた」ことについてである。わたしがこのテキストでいちばん恐怖をかんじたことは、やはりこの点だった。ヒットラーも、スターリンも、大衆の熱狂的な支持をえて、また、きわめて民主主義的な手続きのもとに、政権を成立させている*1。まさに市井の人々にこそ、つよく支持されていたわけである。やばいよなあ。全体主義運動という問題の根が深いのは、それが国民の総意にもとづいて始動していることにある。 「権力は下からくる」といったのは、ミシェル・フーコーだ。この場合の「下」を、大衆や世論、同調圧力といいかえてもかまわないだろう。日本においても、たとえば