小説と映画の大きなちがいは、それが個人でできる作業かどうかであるとおもう。基本的に、商業映画をひとりで作ることはできない。規模の大小はあれ、複数の人間が関わることでしか映画は完成しない。反対に、小説はひとりで書き上げるものであり、他者が介在することはすくない。あくまで小説は個人作業なのだ。小説と映画という表現手段には、そのような差異がある。 複数の人間が関わることで、そこで予期しなかったできごとが確実に発生する。それが映画という表現の特徴である。カメラの前で役者たちがどんな演技をするかは、撮ってみないとわからない。とある風景を撮ったとき、そこにたまたま写り込んでしまうなにかを、事前に言い当てることができない。想像もしていなかったようなシーンがたまたま撮れてしまう可能性はおおいにある。複数の人間が共同でひとつの作品に参加するとき、そうした偶然によって映画が豊かになっていくし、そこが映画のおも