あるライブハウスのイベントに出演したときのことだ。朗読のパフォーマンスを終えた私に、初対面の男性がこう尋ねてきた。 「あなたの朗読にはエロスが感じられないね。最近セックスしてる?」 セックス? あっけにとられ、固まった。空気は完全に凍りつき、その場の男性たちも顔を見合わせて黙り込む。 「そんなの関係ないと思いますけど......」 精一杯に反論するも、彼は「いや、あるね! 男と濃い恋愛をして、その経験を詩に注ぎ込まないと!」とお決まりのアドバイス。立派な(?)セクハラである。 彼の言動も腹立たしいが、何より歯痒かったのは、彼に対する自分自身の反応だった。下世話な質問にまごついてしまい、彼の思惑通り「臆病な女の子」を演じてしまった。打ち上げの飲み会で、同じ質問を受けた同世代の女性は、「イエー! セックス!」と軽やかに応酬し、笑いに変えていた。その光景もまた衝撃的だった。たとえ私が「イエー!」