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ブックマーク / tojikoji.hatenablog.com (42)

  • 【書評】霊長類研究と超エンタメSF『Ank: a mirroring ape』 - Under the roof

    Ank: a mirroring ape 作者: 佐藤究 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/08/23 メディア: 単行 この商品を含むブログ (5件) を見る 2026年、京都。テロや略奪行為ではなく、「人がそれぞれお互いに殺し合う」という謎の暴動が起こる。「Kyoto Riot」と名付けられたその暴動は、SNSを通じて全世界に拡散され、突如お互いに殺し合うその衝撃的な姿に「ウイルス感染によるパンデミックだ!」とか、「ついに人類はゾンビの脅威に晒された!」といった様々なパニックを引き起こした。 しかし、実際は、ウイルスでもゾンビでもなく、たった1匹のチンパンジーが原因だった… すんごく面白かった。去年読んだ『ここから先は何もない』クラス。 tojikoji.hatenablog.com ストーリーの基盤となっているのは、霊長類研究。 人類は今や高度なAIを開発するに至った

    【書評】霊長類研究と超エンタメSF『Ank: a mirroring ape』 - Under the roof
  • 【書評】関野吉晴ファン必見『カレーライスを一から作る』 - Under the roof

    カレーライスを一から作る: 関野吉晴ゼミ (ポプラ社ノンフィクション―生きかた) 作者: 前田亜紀 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2017/11/02 メディア: 単行 この商品を含むブログ (1件) を見る タイトル通り、武蔵野美術大学教授の関野吉晴氏が、自らのゼミで学生たちと一緒に、1年間かけて「カレーライスを一から作る」軌跡がまとめられただ。 まとめサイトっぽく言えば、「TOKIOがカレーを作ったら」かな。米も、野菜も、肉も、カレールーではなくスパイスも、そして、器も自分たちで作る。TOKIOなら簡単にやってのけそうではある。 関野吉晴さんと言えば、僕にとってはもちろん『グレートジャーニー』だ。放送してたのは、中学生の頃だったかな…。 確かフジテレビで不定期に特番放送されていた番組で、医師であり探検家でもある関野さんが、アフリカから人類が世界中に広がっていった旅路を辿

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  • 【書評】まさに死闘。『レッド・プラトーン 14時間の死闘』 - Under the roof

    レッド・プラトーン 14時間の死闘 作者: クリントンロメシャ,Clinton Romesha,伏見威蕃 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/10/18 メディア: 単行(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 戦争モノのノンフィクション。ノンフィクションなのに、今まで読んだどの戦争小説よりも激しくて一気に読んでしまった。 書はアフガニスタン北部の山岳地帯に作られた前哨「キーティング」にて、米軍兵約50人対タリバン兵300人の14時間に及ぶ死闘を、実際にその場で戦闘をして生き残ったレッド小隊のクリントン・ロメシャ二等軍曹が自身の経験と、生き残った兵士たちへの膨大な聞き取りをもとに、細部まで描き切った戦争ノンフィクションだ。 まず冒頭で戦闘の行われた前哨地「キーティング」の立地についての細かな説明がある。通常、こういった前哨地などの守るべき陣地は「敵よりも高いところ」に

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  • 【書評】今年一番のミステリー『湖畔荘』 - Under the roof

    湖畔荘〈上〉 作者: ケイト・モートン,青木純子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2017/08/31 メディア: 単行 この商品を含むブログ (2件) を見る 湖畔荘〈下〉 作者: ケイト・モートン,青木純子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2017/08/31 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る これは凄かった。久々の一気読みミステリー。 上下巻合計600ページ超の長編。1930年代と2003年のイギリス・ロンドンとコーンウォールという田舎を舞台に、時代と場所を行ったいり来たりしながら話は進む。 事件は1933年のコーンウォールにおいて、エダヴィン家の4姉弟の末っ子で当時1歳だったセオ・エダヴィンが行方不明になることから始まる。 セオは当時18歳から12歳の姉が3人おり、さらに愛情深い両親と乳母にも囲まれてすくすくと成長していた。エダヴィン家にとって待

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  • 【書評】ケン・リュウ凄すぎ。この短編集もハズレなし。『母の記憶に』 - Under the roof

    母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ケンリュウ,牧野千穂,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/04/20 メディア: 単行 この商品を含むブログ (7件) を見る 前作『紙の動物園』がめちゃくちゃ面白かったケン・リュウの短編集第2弾。『紙の動物園』も短編集で、しかも全部面白いという傑作だったため、今回は期待値高いけど大丈夫か…と思って読み始めたらこれがもう余裕で上回ってくる面白さ。まじかよケン・リュウ。絶対次も読むしもっと刊行ペース上げてくれとも思わざるを得ない。 で、どのへんが面白かったかについて。 前作『紙の動物園』では全編通じて「泣けるSF」だった。今作でも勿論泣ける系の話が素晴らしいが、それよりも最初に収録されている『鳥蘇里熊』が凄い。 舞台は1900年代初頭のパラレルワールド。場所は満州なんだが、特殊な機械技術が発展した

  • 【書評】「仕事のため」「家庭のため」に罪悪感があるすべての人へ。『仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント』 - Under the roof

    仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント 作者: アン=マリー・スローター,篠田真貴子(解説),関美和 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2017/07/31 メディア: 単行(ソフトカバー) この商品を含むブログ (2件) を見る こういった「仕事と家庭の両立」について書かれているは無数にある。書の冒頭で特に言及されているものに、Facebookのシェリル・サンドバーグCEOが著した『LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』というがある。 『LEAN IN』では、女性は職場で男性に遠慮している、もっと勇気とやる気を出せば、仕事と家庭の両立はできる。組織のトップに立つ女性が少ないのは、女性たちがもっと頑張らないからだ!という内容で、瞬く間に全米ベストセラーとなった。 そんなベストセラーの内容を顧みたうえで、書の著者であるアン=マリー・スロー

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  • 【書評】ブラックスワンを乗り越えて、反脆くなれ!『反脆弱性ーー不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』 - Under the roof

    反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2017/06/22 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る 反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2017/06/22 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る 著者ナシーム・ニコラス・タレブのは『まぐれ』『ブラックスワン』と両方読んできて、どちらも強烈に記憶に残る面白さだった。 そんなタレブの最新作。『ブラックスワン』では「ありえないことは起こり得る」ということを様々な視点からひとつひとつ塗りつぶすようにして書き連ねていたが、書でもそのスタイルは踏襲されている。だからこそ面白い。 書のタイトルでも

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  • 【書評】衝撃のド変態学者『動物になって生きてみた』 - Under the roof

    動物になって生きてみた 作者: チャールズフォスター,Charles Foster,西田美緒子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/08/17 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る ヤバい。内容ではなくて著者がヤバい。 『動物になって生きてみた』 一見すると、なんかニコ動の『歌ってみた』みたいで軽いノリを感じるが、中身のヘビーさはとんでもない。 タイトル通り、著者である生物学者が動物の暮らしを体験してみた、という内容なんだが、そのやり方が徹底しすぎててヤバい。 アナグマのように地面に掘った穴の中で寝泊まりし、ミミズをべ、ネズミを追いかけまわし、嗅覚で周囲の様子を伺おうとする。 カワウソのように極寒の川へ飛び込み、髭の感覚で(人間の髭とカワウソの"ヒゲ"が同じ機能を持つわけないのに!)水中の様子を伺おうとする。都会に生きるキツネのように飲店の残飯や生ゴミを漁

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  • 【今週のお題】秋の夜長に読みたい小説5選 - Under the roof

    今週のお題「読書の秋」 年中を読んではいるけど、「読書の秋」にはよりたくさんを読みたい、いや、むしろ夏よりも読書が捗っていつもよりたくさんが読めるんじゃないか?なんて考えてこの秋はいつもの倍ぐらいを読みまくってやろうといつも思うんだが、実際にはいつもと変わらないペースで読む、いつの間にか秋が過ぎ去って「たくさん読む予定だったのにな…」なんて虚しい感覚を味わったりする。 ただ、秋の読書に特別感があるのは間違いない。なので、ぜひ秋の夜長に時間を気にせず没頭して読んでほしい小説をいくつか紹介したいと思う。 ◆その女アレックス その女アレックス (文春文庫) 作者: ピエールルメートル,橘明美 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/09/02 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (157件) を見る まあ、やっぱり秋の夜長はミステリーということで、コレ。 ミステリーの醍醐味

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  • 【書評】珠玉の面白ノンフィクション『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 - Under the roof

    鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。 作者: 川上和人, 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/04/18 メディア: 単行(ソフトカバー) この商品を含むブログ (6件) を見る 最高。なんだろうこれ。 生物関連の科学で知見が広がり、かつ「鳥類学者」という珍しい職業の実態について綴られた社会学的ノンフィクションであり、それでいてふんだんにボケが散りばめられた珠玉の面白エッセイ集でもある。 ありえない組み合わせのようで、絶妙な割合でブレンドされていて最高に面白い。 単純に鳥類学者とはなんたるやとか、鳥類の生態はどうなっているとかいった内容も充分面白いのだが、書の核は著者が実際に調査地に赴いて行うフィールドワークの様子がたまらなく面白い。 主に小笠原諸島で調査をしているという著者。生物の調査なので、居住区域ではなく山林部、場合によっては無人島へ調査に向かうことも多い。小

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  • 【書評】SF+ミステリー+疾走感『ここから先は何もない』 - Under the roof

    ここから先は何もない 作者: 山田正紀 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/06/20 メディア: 単行(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る エンタメ小説として一級品。 完成度云々じゃなくて、ミステリー色の高いSF設定の謎が、疾走感あるストーリーの展開とともに解けていく様は面白くて止まらなくなる。ボリュームはあるが、あっという間にストレスなく読み切れてしまう、まさにジェットコースター小説。 日が打ち上げた小惑星探査機は、火星近郊の小惑星『ジェネシス』にてサンプル回収するはずが、なぜか別の小惑星『パンドラ』へ着陸。そして回収したサンプルから発見されたのは、なんと『エルヴィス』と名付けられた化石人骨だった。なぜ、探査機は別の小惑星へと目標を変え、しかもその小惑星には人骨が埋まっていたのか… めちゃくちゃワクワクするプロットだけど、なんか既視感。 そう、

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  • 【書評】夢は叶う。『バッタを倒しにアフリカへ』 - Under the roof

    バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 作者: 前野ウルド浩太郎 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2017/05/17 メディア: 新書 この商品を含むブログ (14件) を見る バッタを『倒しに』アフリカへ。『倒しに』という強いワードと、鋭い眼光にふざけた全身緑の中途半端なバッタコスプレ。 インパクト大の表紙から察するに、ちょっとしたおふざけもありながらバッタ研究者がバッタ被害に苦しむアフリカでの研究報告をするのかな~なんて軽い気持ちで手に取ったら、全く違った。 これは、夢追い人のサクセスストーリー(ノンフィクション)だ。 実際、モーリタニアでのバッタ被害の甚大さや、そのためのバッタ研究の必要性、モーリタニアにおけるバッタ対策の現状等が詳しく解説される。が、広大な砂漠に大量発生した「サバクトビバッタ」が集団移動して農地を荒らす、というシチュエーションは我々日人にとって想像しがた

  • 【書評】僕らの心も操られてる?『心を操る寄生生物:感情から文化・社会まで』 - Under the roof

    心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで 作者: キャスリン・マコーリフ,西田美緒子 出版社/メーカー: インターシフト 発売日: 2017/04/15 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る 先日読んだ『ゾンビ・パラサイト』が面白かったので、それ以来気になっていたこれも読んでみた。 tojikoji.hatenablog.com より深く、広く、パラサイトという分野について書かれており、とても面白かった。 『ゾンビ・パラサイト』でも登場したハリガネムシや冬虫夏草などの有名どころもたくさん登場するうえ、それ以外の寄生生物たちもパンチの効いたやつらばかりだ。 個人的なお気に入りは「ロイコクロリディウム」だ。こいつは宿主であるカタツムリに寄生すると、脳を経由して触角へと侵入する。カタツムリの触覚って細長いものの先端に小さな目が付いているが、ロイコクロリディウムはその触角の中でどんど

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  • 【書評】文明を築いた3つの革命『サピエンス全史』 - Under the roof

    サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/09/08 メディア: 単行 この商品を含むブログ (31件) を見る サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/09/08 メディア: 単行 この商品を含むブログ (14件) を見る 今更読んだら、めちゃくちゃ面白かった。読みやすくて知見も広がる。売れまくったのも納得。 「ホモ・サピエンス」とは、「賢い人」という意味だそうだ。 「人類」と呼ばれる種の中で、現在生き残っているのは我々ホモ・サピエンスだけであり、大昔に存在していたネアンデルタール人やホモ・エレクトゥスたちは我々のような文明を築くことができずに絶滅してしまった。書ではなぜ、ホモ・サピエン

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  • 【書評】我々の自然観を作り上げた人物『フンボルトの冒険 -自然という〈生命の網〉の発明』 - Under the roof

    フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明 作者: アンドレア・ウルフ,鍛原多惠子 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2017/01/26 メディア: 単行 この商品を含むブログ (3件) を見る 凄かった。読み終えるのに3週間もかかってしまったが、あまりの面白さに噛みしめるように読んだ。 フンボルトについて書かれたノンフィクション。著者の膨大な取材データを元に書かれており、情報量が半端ではない。 そもそも、フンボルトとはなんぞやと。 フンボルトといえば、フンボルトペンギン。恥ずかしながら僕自身その程度の知識しかなかった。 だが、フンボルトとは『アレクサンダー・フォン・フンボルト』と言う名の科学者であり、18世紀当時の世界においてナポレオンに次ぐ有名人と目され、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンへ多大な影響を与えた人物である。これだけでも、おお、面白そうと興味が湧いてくる。

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  • 【書評】人間の高潔さと残酷さ『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 - Under the roof

    いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件 作者: 大崎善生 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2016/11/30 メディア: 単行 この商品を含むブログ (3件) を見る 嗚咽をこらえられず、何度も中断せざるを得なかったが、ようやく読み終えた。 書は、「名古屋闇サイト殺人事件」と呼ばれる、ネット上で知り合った見ず知らずの男たちが当時31歳だった被害女性を、行き当たりばったりに連れ去り金品強盗をしたうえでとても残忍なやり方で殺害、死体遺棄した事件について書かれたノンフィクションだ。 冒頭、事件の顛末がほんの数十ページだけで書かれる。その部分だけでも、いかに卑劣な犯罪であったかが描かれ、なぜこの男たちがこんなにも残忍な事件を起こしたのか、闇サイトで知り合った赤の他人たちがこんなひどい事件を起こせるものなのか、そして特に強調されている「被害女性は最後まで生きることをあきらめずに戦っ

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  • 【書評】自然は寄生生物で溢れている『ゾンビ・パラサイト』 - Under the roof

    ゾンビ・パラサイト――ホストを操る寄生生物たち (岩波科学ライブラリー) 作者: 小澤祥司 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/12/07 メディア: 単行(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を見る 「冬虫夏草」ってご存じだろうか。 冬は虫で、夏は草。別のこの名前のとおり季節によって虫モードと草モードを使い分けるとかではなく、昆虫の身体を媒介に成長するキノコの一種のことだ。代表的なのは「セミタケ」と呼ばれるセミの幼虫から発生したキノコで、セミの幼虫って地中にいるからまるでセミの部分がキノコの根っこみたいに見える。中国なんかでは漢方として重用されているらしい。虫から生えたキノコなんて逆に体に悪そうだが。 子供のころ、地中の生き物について書かれた図鑑で目にして、とても興味を持ったのを覚えている。セミからキノコで「冬虫夏草」という名前。当時おそらく小1くらいだったの

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  • 【書評】面白くて無情な図鑑『寿命図鑑』 - Under the roof

    寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑 作者: やまぐちかおり 出版社/メーカー: いろは出版 発売日: 2016/07/24 メディア: 大型 この商品を含むブログを見る 書は、様々なものの『寿命』をイラスト付きで面白く紹介してくれる図鑑だ。『寿命』というとイコール生きものの寿命のことと思うが、書で紹介しているのは植物や日用品や宇宙まで、300種類以上のさまざまなものの寿命について教えてくれる。 図鑑って来「知らない生きものや草花を調べる」ためのものだが、調べたい対象がいなくても昆虫や宇宙の図鑑を眺めるのが好きな人は多いと思う。僕も子どもの頃そうだった。 今は読み物として面白い図鑑がたくさんあり、最近僕が読んだものでは『生きものたちのつくる巣109』と『ざんねんな生き物事典』が面白かった。書もそれらに負けないくらい面白い。 tojikoji.hatenablog.

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  • 【書評】生きることを問う短編集『老ヴォールの惑星』 - Under the roof

    老ヴォールの惑星 作者: 小川一水 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2013/11/15 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る いつか読もうと思ってたやつ。面白かった。こういう出会いがあるから、やっぱり読書って最高だなと思える。 作は『天冥の標』シリーズとかで有名な日のSF作家小川一水の、10年以上前に発行された短編集。短編集と言っても100ページくらいの物語が4編入っているので、ひとつひとつは中編くらいの長さがある。 全体に漂うテーマは、「人間が人間らしく生きるためには?」ということだろう。 1編目の『ギャルナフカの迷宮』では、極限状態と疑心暗鬼は人を殺すか? 2編目の『老ヴォールの惑星』では、未来に何を残すか? 3編目の『幸せになる箱庭』は、まあ要するに映画『マトリックス』。人間らしさとは? 4編目の『漂った男』は、今を生きる意味について。 全

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  • 【書評】勝ち組たちの醜悪な争い『ハイ・ライズ』 - Under the roof

    ハイ・ライズ (創元SF文庫) 作者: J・G・バラード,村上博基 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/07/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (12件) を見る ロンドン中心部にそびえる40階建てのタワーマンション。戸数は1,000戸。マンション内にはスーパー、プール、銀行、学校が完備されていて、住民は医師やTVプロデューサー、建築家、評論家など、高収入の所謂「勝ち組」たち。 最新のマンションで不自由のない暮らしをしていた住人達が、全室入居となった夜に突如起きた停電をきっかけに、住民も建物もおかしくなっていく…って話。 マンションは、主に10階までを「下層部」35階までが「中層部」それより上が「上層部」として、上のほうの住人ほど下の階の住人たちを見下し、逆に下層の人たちは上層の人たちに対し反骨心を抱いている。 住民たちは、停電をきっかけにいさかいを始め、それが

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