日々袖を通す服には、一人一人の着用者の「ことば」が宿ると共に、その時代時代に各自が共有していた「ことば」も宿るもの。世相やとうとばれた価値観、そして政治や経済状況などが、それにはっきりプリントされてしまうからだ。 特に同じアイテムを時系列に比較すると、より深く認識できるというもの。メンズウエアでそれを最も簡単に示せるのは、やはり紳士服=スーツではないだろうか。 何せ20世紀のほぼ全体を通じ、ビジネスウェアの主役を張ってきたのだから。ということで今回は、20世紀の各時代を象徴するようなスーツのスタイルをピックアップ。特徴と共にその背景にあるものについても、少しだけのぞいてみたい。 19世紀半ばの原型の登場から地位が少しずつ向上し、ビジネスウェアとしての認識が世界的にしばらく定着した頃のスーツスタイルがこちら。簡単に言えば、まだ全体的なシルエットに強い抑揚がなく、非常に素朴な印象である。 ジャ