たまらなくノスタルジーを喚起する光景がある。日本人の遺伝子に刻まれた、集合的無意識とでも呼ぶべき原風景。田舎のあぜ道、夏の入道雲、茜色に染まった住宅街、そしてドラゴンの裁縫セット――。 ドラゴンの裁縫セットとは、小学校家庭科の教材として販売されている裁縫道具のバリエーションの1つである。学校推薦のカタログによく掲載されていたため、20代以下の世代なら目にした記憶がある人は多いだろう。少なくとも、私と友人は全員ドラゴン使いだった。 思えば裁縫セットで作るエプロンもドラゴン柄だった。小学生男子は3度の飯よりドラゴンが大好き。他の教科が「メダカを育てましょう」とか、「きつねの気持ちを答えなさい」とかやっている中、家庭科は「ドラゴンの裁縫セットでドラゴンのエプロンを作りましょう」である。生物としての格が違う。 ところが、そんなドラゴンがカタログのラインアップから消えつつあるらしい。7月初旬、ドラゴ