ナマケモノは中南米の熱帯雨林に棲む貧歯目の哺乳動物で、地上約10メートルから30メートルの高みで木の枝にぶるさがって一生の大半を過ごす。(フタツユビ・ナマケモノとミツユビ・ナマケモノがあるが、特に動きがスローで、無防備で「ナマケモノらしい」のは後者である。)ナマケモノほど蔑まれてきた動物も少ない。客観的であるはずの科学者でさえほとんど感情的になって様々な罵詈雑言を浴びせてきた。あまりに「怠惰」で「鈍感」で「低能」な彼らは、到底きびしい生存競争に勝ち残ることのできない、生物進化史上の落伍者だというわけだ。特に西洋ではこうした偏見が何世紀も続いた。 しかし、近年の動物生態学はミツユビ・ナマケモノについて、驚くべき事実を報告している。まず彼らは普通の動物の約半分の量の筋肉で生活している、という。ミツユビ・ナマケモノの場合体重がたったの4、5キロほどだが、筋肉はその4分の1を占めるにすぎない。動き