所有と経営が分離した企業の経営者は、株主そのものではないため、株主価値を最大化する行動をとらない可能性がある。No.61(2015年8月)で紹介したように、コーポレートファイナンス論では、この問題をエージェンシー問題という。株主をプリンシパル(所有者)、経営者をエージェント(代理人)とみなし、利害が一致しない原因や解決策を研究することが、コーポレートファイナンスにおけるガバナンスの研究となっている。 世間では、エンロンやワールドコム、あるいは東芝の事件など、不祥事や不正な会計処理によって株主価値が毀損されたことが話題になる。しかしながら、それらはルール違反であって、法律や規則によって取り締まることができる。白と黒がはっきりしている。一方、投資やオペレーションに関する意思決定は、事後的に損失が計上されたとしても、意思決定が誤りであった(株主価値を最大化するものではなかった)と立証することは困