こうなる。パワーズの出来損ないみたいだ。 きのうきょうと書き進めていたが、お話の方がどうにも掴めない。 その報せを、わたしは早朝の東京駅で受け取る。父の死。音にしてたった四文字。ひと影の疎らなプラットホームで、すべてが静止したかのように灰色がかった薄明のなか、わたしはそれだけの情報に耳を澄ませる。ひと晩もたへんかった。兄は云う。声が震えている。その揺らぎ、抑えられた息づかい、舌と唇の発する湿った破裂音までもデバイスは捕捉してゆく。ほんま、いきなりやった……。携帯を耳に押しつけながらながらわたしは、兄が電話をしたと云う事実について考える。いつもメールを、それも事務的な文面でしか運用しない兄が夜明け、まだ相手が眠っているかも知れない時刻に電話を掛けた。その選択の方が父の死と云う文字列よりもずっと雄弁に、決定的に、父が死んだことを語っている。 日付は五月一日、メーデー。なんの意味もない偶然だ。四
これまでのあらすじ: わかんないよ! どうするのがよかったのかも どうしてこんな世界にふたりっきりなのかも… ……なにもわかんないけど…… 生きるのは最高だったよね…… (『少女終末旅行』第42話』) proxia.hateblo.jp 自分かマンガかのどちらかを救えないのならば感想やレビューを記す意味などなく、つまり方舟はデカく設計しておいたほうがいい。つくみず先生のまんがには人生のだいじなことが全部つまっていますね。 というわけで、今回は2017年内に発売された短編集、単発長編、年内打切マンガのベストセレクションです。 一巻か二巻でまとまっているのですぐに読めて、きっちり面白く、かつ続きを気にしなくていい。そういう作品の話です。 選定ルール🐰 *ルール1:(奥付の発行日で)2017年中に発表された単発長編、短編集、アンソロジー、および同年内に第一巻と最終巻が発売された作品を扱います。
当ブログの最新記事一覧が『ズートピア』で埋め尽くされてて『乙嫁語り』のパリヤさん顔で「うへえ」となりそうな今日このごろですが、もうちょっとだけ『ズートピア』の話をしたいと思います。 今回はズートピアの制作過程について、です。ガイドブックや各種インタビューを読んだ人は漠然とながら掴んでるようなことだと思います。 ネットで読めるインタビュー漁ったのを主観的に再構成したものなので詳細不明な部分*1も多く、あるいは間違いがあったり、誤訳や誤解してる部分があったりするかもしれません。お気付きの場合はご指摘いただけると幸いです。 さしてネタバレはないですが、基本的には観た人向きです。 鈍行列車じゃ too late 『ズートピア』の終盤、ジュディとニックが暴走した機関車に乗ってアクションを繰り広げるシーンが展開される。 目の前から対向車が迫ってくるが、彼らの乗る機関車はブレーキがきかない。 このままだ
参考:2011年読書まとめ - フィララバキシア 今更2013年新作のベスト - フィララバキシア 2014年度新本格新刊本屋大将大賞 - フィララバキシア 犬の力――2015年度8月までのポケミス・ラウンドアップ - フィララバキシア 去年は絶望的に読んでなかったので、去年のまとめみたいなテンションで書けない……。 読書ログを呼び出す元気もないので思い出してなんとかやります。 わたしの一ダース ミュリエル・スパーク『ブロディ先生の青春』 ブロディ先生の青春 作者: ミュリエルスパーク,Muriel Spark,木村政則出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 新訳。ふとしたはずみでナラティブの時間軸が入れ替わりまくる無茶苦茶な構成なのにもかかわらず、するりと読めてべらぼうに面白い。なんでこんなことが可能なんだろう。意味がわ
ベスト作品 参考: 上半期のベスト 評価基準は「ドラッグとして有用か否か」です。 1.『インヒアレント・ヴァイス』(ポール・トーマス・アンダーソン、米) 八月のガラッガラな劇場でダラダラとダウナーに何度も繰り返し観る映画、すなわち夏の映像ドラッグとしてこれ以上にドープな映画は存在しない。そして二度三度と繰り返していく内に、これは逃走についての、アメリカン・ハードボイルドの基調である「共にあること」*1についての寓話であることがすけてみえてくる。そうなれば三倍おいしい。世界政府は一刻もはやく国民の健康と福祉のために本作を薬用映画として公認および合法化し、毎年夏に『おおかみこども』とセットで一日中併映すべき。フローズンバナナチョコレートつきで。 2.『セッション』(ダミアン・チャゼル、米) ハゲ vs ふてくされたガキ。キャラクターのキチガイ性みたいなことばかり言われていて、たしかにそこも素晴
精緻化されていないものについて好き勝手言うのが好きなので、基本的に評論や批評について語る言葉を持っていません。つけくわえておくと、基本を疎かにしがちな人間でもある。困ったものです。 マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代 作者: 門井慶喜出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2015/10/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る マジヒスとは何か 門井慶喜『マジカル・ヒストリー・ツアー』は、小説家門井慶喜が彼のフィールドである歴史ミステリについて真摯に考察を行った長編評論です。 歴史ミステリについて書かれた書物なのだから、歴史ミステリに興味を抱いている人が読めばよい。 もちろん本とは多様なチャンネルが開かれているもので、門井慶喜が好きだからだとか、ミステリ評論に興味があるからとか、『薔薇の名前』とかパムクとか読む気しねえけどいっちょ前に読んだフリをした
注意 この記事はトマス・フラナガン『アデスタを吹く冷たい風』のネタバレをおおいに含んでいます。未読の人で展開を知りたくないという方は、読まないでください。 未読だけどどうせ読まないし、いいや、という方も、たぶん読んでもわけわかんないだけなんで読まないほうがいいです。 『アデスタ』にだって繋がりがあります。 一冊の本という同じ空に浮かんでいるにもかかわらず、『アデスタを吹く冷たい風』に収録されている七つの短編を一連の星座としてみなす人は少ない。 四編の<テナント少佐もの>が、かろうじてひとまとまりにくくられるくらいか。しかしその枠内ですら連続性を指摘せよ、と言われたら「テナントのかっこよさ」だとか「特殊な世界観設定」だとかふんわりした印象におさまってしまう。 元来トマス・フラナガンなる星座は存在しなかった、という説もある。文庫版に付されている千街晶之の解説によれば、本作はEQMM誌に掲載され
・俺たちは人間性を証明するために新刊チェック以外の活動をしなければならない。 ・四コマ漫画が苦手だ、とする必要もない告白をすると「またきららdisか……」みたいな受けとられ方をして甚だ不本意なんでありますれけど、どこの会社が、とか、だれの作品が、とかそういうんじゃなくて四コマなる媒体そのものの緩慢さが自分にとってニアリー致命的なわけです。あの等規格のコマを等間隔に四つならべた光景になにかしら想像的ディストピアを肌で感じるのかもしれず、あるいは単に作者の方で時間を統御してくれないダルさに耐えきれないのかもしれず。 ・まあしかし私かてそこは型の国のジャパニーズなわけですから、歌舞伎や浄瑠璃よりはよほど触れる機会の多い伝統芸能であることは間違いない。 ・型といえば「学園ゾンビもの」漫画ってえのはこれもひとつの型ですよねもう。『ハイスクール・オブ・ザ・デッド』は言うまでもなく、『がっこうぐらし』と
注意:以下の作品のネタバレがあります。 謎解きドリル(1) (ガンガンコミックスONLINE) 作者: 河添太一出版社/メーカー: スクウェア・エニックス発売日: 2014/09/22メディア: コミックこの商品を含むブログを見る謎解きドリル(2) (ガンガンコミックスONLINE) 作者: 河添太一出版社/メーカー: スクウェア・エニックス発売日: 2015/01/22メディア: コミックこの商品を含むブログ (1件) を見る 「基礎から学ぼう推理のいろは」―Web版「問1」アオリ文より 『謎解きドリル』は河添太一による推理ギャグ漫画です。といっても、現状出版されている2巻までの単行本を読んでみると、本作はギャグ、すなわち推理漫画のパロディ(脱線)によって読者の笑いを誘うことを目的とする一方で、「推理もの」というジャンルと正対しているように感じさせる面もあります。 このことは本作の魅力で
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