昔々あるところに、たけるんばという者がおったそうな。 あるとき、たけるんばの元に京都から「はてな」という薬売りが来てこう言った。 「たけるんばどん、たけるんばどん。『はてぶ』というそれがしの薬箱を置いてはもらえんか? なにお金は一銭もかからぬし、面倒なことは何もないゆえ」 お金がかからないということであれば、たけるんばには断る道理もありません。たけるんばは、はてぶを置くことにしました。 「薬を使う場合はこの帳面を使われよ。なに、単なる記録。それがしが見るものではござらん。たけるんばどんが管理されよ」 と、はてなという薬売りは言い残し、薬箱と帳面をたけるんばの元に置いていくのでした。 時がたち、はや幾年。何回目かの薬箱の確認に、はてなはたけるんばの元にやって参りました。 いつものようにはてなは薬箱を確認し、それをたけるんばは眺めていたのですが、不意にいつもと様子が違うことにたけるんばは気付き