終わりの始まり 読みかけの本の表紙を開くと電気料金の請求書が挟まっていた。 シロネコはその支払い期限が昨日だと確かめると、深い溜息とともに天を仰いだ。 電気だけは止めるわけにいかない。 乱雑に積まれた段ボールの上に、やはり乱雑に置かれた請求書の山。 もうどれを支払って、どれを支払っていないかもわからない。 「店…閉めたらこれ全部保証金で相殺できるんだっけ。」 政府は、“緊急事態宣言”を発表した。これでまた一層の売上減になることは間違いない。 シロネコは西新井でツナマヨ専門居酒屋“ねこまんま”を経営している。2月ごろはまだ呑気なものだったが、3月に入って都知事が会見をするたびに、政府が会見をするたびに売り上げが“ぐんぐんと”減っていった。 どうしたらいいものか。パソコンを触っていた手をとめ、頭を下げて左手の親指で骨に沿って左目の内側を押しながら、ゆっくりと目を閉じる。 「どうやって、被害を最