松濤にある観世能楽堂。高級住宅街のなかでもひときわ目立つ大きな建物だ。駅からは遠く、来場者からは「不便」との声が聞こえる〔PHOTO〕蓮尾真司 東京の一等地の中でも、五指に入る高級住宅街・渋谷区松濤。元々は紀州徳川家の下屋敷があったこの地域には、現在麻生太郎副総理をはじめとした政治家や、森進一ら著名人の豪邸があることで知られている。そんな地に、ひときわ目立つ大きな建物がある。広さ約840坪の土地に、1972年に建てられた、能の聖地と言われる「観世能楽堂」だ。日本の伝統芸能である能楽の普及を目的につくられ、能楽ファンの間で親しまれてきたこの建物が、間もなく姿を消してしまうかもしれないという。 「『観世能楽堂』を所有・管理している『観世会』が、能楽堂の土地の売却を検討している、というのです」(大手不動産会社関係者) 赤字が続いている 「観世会」は観阿弥を始祖とし、現在約900人の能楽師を擁する