仙台市内の住宅地にある公立中学で3年間、今野泰幸(やすゆき)といっしょだった。おとなしくて目立たない少年だったので、東北高を卒業後、札幌入団、アテネ五輪出場というニュースを聞くたびに、「あのヤッチが?」と驚かされた。そして今度はW杯である。 いつもニコニコと仲間の後ろをついて歩いていた。校庭は狭く、野球、ソフトボール、陸上、サッカーの各部がひしめくように練習していた。ソフト部だった私は、サッカー部と校庭を奪い合ってよく口げんかをしたが、ヤッチは一度も参戦してこなかった。だからといって一人練習に没頭しているというふうにも見えなかった。 あの頃、何を考えていたのか。5月中旬、FC東京の練習場で話を聞いた。「指導者もいなかったし、プロなんてあきらめてた」。当時の楽しみは、録画したトヨタカップのビデオを見ることだったらしい。「海外選手のプレーはすごくて、ユニホームの色も鮮やか。見ているだけで楽