九井諒子(くい・りょうこ)という天才がいる。元々、ネット上で作品を公開していた人物で、けれども『ワンパンマン』のようにバズることはなく、また単行本も3冊(全て短篇集)しか出ていないため、現在は一部のマンガ好きか先端文化に関心がある人にしか知られていない。 しかし、ひとたび彼女(彼?)の作品に接した人は、軒並み“極めて高い”評価を与えている。ニコ動的に言えば「もっと評価されるべき」あるいは「さらに評価されるべき」人物である。 『ひきだしにテラリウム』は、そんな九井諒子の3冊目の短篇集であり、全部で33篇のストーリーが収められている。作品は最短2ページ、最長11ページでいずれも一話完結型。おそろしいのは、そのどれもが納得のクオリティなことだ。