1980年代の東京・山谷。混沌としたこの街で、今では共に絶滅危惧種となった「暴力の権化」ヤクザと過激派が激突したことがあった。近刊『ヤクザと過激派が棲む街』で、この「戦争」とさえ呼べる激しい衝突を取材したフリージャーナリストの牧村康正氏が、当時の様子を活写する。 ヤクザの街宣車を燃やす活動家たち 「ヤクザ」と「過激派」がまともにぶつかったら、どちらが勝つか。 ——この問いに、あたかも異種格闘技を観るような興味をかきたてられても不思議ではない。両者は思想信条においては右と左の対極に位置しながら、ともに暴力を最大限に肯定する集団と見られているからだ。 いまから40年ほど前の1980年代初頭、日本国粋会金町(かなまち)一家と山谷(さんや)争議団が、日雇い労働者の街・山谷(東京都台東区)で本格的な抗争を起こした。 金町一家は博徒の老舗組織として名高いが、あらたな利権を求め、寄せ場(日雇い労働市場)