『テルマエ・ロマエ』 ヤマザキマリ マンガだからこそ表現できる面白さがある。 文章よりも直感的で、映像にはない「間」の面白さ。 本作はそうした面白さに満ちている。 確かにアイデアも秀逸だが、その面白さが現ずることなく伝わるのは、マンガという表現方法だからこそだろう。 表題の『テルマエ・ロマエ』とは、「ローマの浴場」のこと。 ローマ時代の浴場デザイナーがタイムスリップし、現代日本の“風呂”と遭遇する。 主人公・ルシウスは保守的というか、元来あまりアイデアが豊富なタイプではなく、そのせいで設計士としての仕事も失いつつある。 しかし、ローマの銭湯から日本の銭湯へタイムスリップしたことで、ルシウスは見たこともない技術と斬新なアイデアに衝撃を受ける。 ここで重要なのは、ローマ時代に生きた人々も現代の日本人に負けず劣らず、「風呂好き」であったという点。 ローマの各都市には共同浴場が置かれ、皇帝から奴隷