痴漢冤罪(えんざい)事件を描き、07年にヒットした周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」は、裁判官や弁護士ら登場人物のリアルさや、法廷の正確な描き方が高く評価された。 朝のラッシュ時に、女子中学生に痴漢と間違えられたフリーターが主人公だ。逮捕後、当番弁護士から示談を勧められるが拒否し、結局起訴される。裁判で冤罪を晴らすため、支援者らの協力で証拠のビデオを作製するなど、涙ぐましい無罪立証の努力を重ねる物語だ。 この映画が、裁判官の冤罪事件に対する意識を変える一因になったとの見方を、裁判官出身の木谷明・法政大法科大学院教授が話していた。先月、東京都内で開かれた講演の場である。 なるほど、裁判官は「逆さまの論理」に気づいたらしいと合点がいった。 逆さまの説明の前に、木谷氏が示した冤罪事件をめぐる最高裁の動向分析を紹介したい。 木谷氏は、かつて最高裁判事の補佐役である調査官を務めた経歴を持