東京新聞に「わが町、わが友」という6回連載エッセイを書いた。 思い出に残る東京の町について書いてくれと頼まれた。 東京新聞だと、読んでいる人は限られているので、ブログで一挙公開することにした。 どぞ。 下丸子(1) 私は東京生まれだが、20 年前に東京を離れ、以後ずっと関西在住である。もちろん、今も東京にはよく行く。母や兄や娘が住んでいるし、友人たちも大勢いる。でも、「東京に帰る」という言い方はもうしない。関西に引っ越してきてから、しばらくは「東京に帰る」という言葉に実感があった。多摩川の鉄橋を渡るときには「故郷に戻ってきた」という気がした。だが、あるとき電車で西に向かっているとき、夕陽を背にした六甲の山並みのシルエットを見て「ああ、もうすぐ家だ」と思ってほっとしたことがあった。その瞬間に東京は「私の街」ではなくなった。 このコラムで私が語るのは「かつて『私の街』であった街」についての回想