言葉だ 最初に壊れたのは そのことに私たちが気づかなかったのは 崩壊があまりにも緩慢だったため 気づいたのは 世界が壊れたのち 亀裂や陥没を せめて言葉で繕おうと 捜した時 言葉は機能しなかった 私たちはようやくにして知った 世界は言葉で出来ていたのだ と 言葉がゆっくりと壊れていく時 世界も目に見えず壊れていったのだ と * 壊れた世界を回復するのだ といって そのための言葉が機能しないから といって たぶん あせらないほうがいい 時間をかけて壊れた言葉は 時間をかけてしか回復しない 壊れたのなら 自分が回復する などと 過信しないほうがいい 知るがいい 言葉が壊れた時 きみじしんも壊れたのだ と きみもまた 言葉で出来ていたのだ と * いま思い出すべきは きみの未明の時 きみの内なる闇に 一つの言葉が生まれ 生まれた言葉が 別の言葉を呼び 言葉たちが手をつないで 立ちあがった その時