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あの年、広島カープは2度目のリーグ優勝を決めようとしていて、夏休み明けの教室はどうにも落ち着かなかった。初優勝からしばらくの間が空き、しかもマジックナンバーの計算上、初めての地元における優勝決定という感激が味わえそうだったのである。 9月末、マジックも一桁になり、朝の学校では無言でスポーツ紙を熟読する姿が目に付いた。友人Fなどは午前中登校、午後は「試合に集中するため」と称し、早退を繰り返していた。Y教師の作成する英語の試験問題にはカープ関連の英作文が頻出するようになった。 町中が浮わつき始めたのが、歩いているだけでひしひしと感じられた。市民全員が評論家と化し、八百屋の老婆が衣笠のバッティングフォームを論じ、乗客の少ないバスでは車内が古葉の采配についてのティーチ・インの場と化し、留置場に拘禁されたコソ泥が「せめて試合結果だけでも教えてくれ」と警官に懇願する有様だった。 そして運命の日──遙か
あの年、広島カープは2度目のリーグ優勝を決めようとしていて、夏休み明けの教室はどうにも落ち着かなかった。初優勝からしばらくの間が空き、しかもマジックナンバーの計算上、初めての地元における優勝決定という感激が味わえそうだったのである。 9月末、マジックも一桁になり、朝の学校では無言でスポーツ紙を熟読する姿が目に付いた。友人Fなどは午前中登校、午後は「試合に集中するため」と称し、早退を繰り返していた。Y教師の作成する英語の試験問題にはカープ関連の英作文が頻出するようになった。 町中が浮わつき始めたのが、歩いているだけでひしひしと感じられた。市民全員が評論家と化し、八百屋の老婆が衣笠のバッティングフォームを論じ、乗客の少ないバスでは車内が古葉の采配についてのティーチ・インの場と化し、留置場に拘禁されたコソ泥が「せめて試合結果だけでも教えてくれ」と警官に懇願する有様だった。 そして運命の日──遙か
桜井昌一著『ぼくは劇画の仕掛人だった』(エイプリル出版)読了。 昨日読んだ『ゲゲゲの女房』に、著者の桜井昌一が印象的な形で登場してくる。 桜井さんとはお互いお金のない時代に惨めさを分かち合った同士ということもあり、水木にとっても私にとっても、最も親しみを感じる人物です。 と……。 それで興味を抱いて、タイトルだけは知っていた本書を図書館の保存庫から出してきてもらって読んだというしだい。1978年に発刊されたもので、いまは入手困難であるようだ(古書では高値がついている)。 著者はマンガ家・辰巳ヨシヒロの実兄で、自らも元マンガ家。そして、小出版社・東考社の社主として、マンガを出版する側でもあった人物(故人)。 本書は、前半が著者と辰巳ヨシヒロが貸本マンガの世界で名を成すまでの奮闘記。後半は、貸本時代からなじみのある大物マンガ家たちの思い出を綴った「列伝」となっている。 辰巳ヨシヒロは、「劇画」
2012年1月追記:本ページは近日閉鎖します。今までご利用頂きありがとうございました。 ・監督五十音順。量が膨大なため分割してupしています。 ・自サイトで発表されていた分のみです。投稿レビュー分はこちらへ。映画以外の批評・作品をお探しの方はこちらへ。 ・年間ベスト、テーマコラムは別項。監督論は監督の所に。 ・タイトル順は無理。「Ctrl+F」で検索するなりして下さい。 ・リンクミスなど指摘して頂けると助かります。 ・転載上等、連絡不要、妥協など朝飯前。 ア行 カ行 サ行 タ行・ナ行 ハ行 マ行・ヤ行 ラ行・ワ行 年間ベスト・複数タイトル 追補編 基本的にぼくはここで、好感を持った映画についてしか書かない。ときどき笑いのネタとしてトンでもない映画を紹介することもあるけど、そういうのはあくまでネタ。だから、すくなくともぼくがダメだと思った映画はほめていない、ってくらいは信用してくれてもいいわ
2009年7月から、毎月1回の連載が開始されたこのコラム。 猫猫先生自身がTwitterで、「あの連載はネット上で話題にならなすぎる。」ということなので、とりあえず、ネット上から探せる情報で、まとめてみた。 なお、2010年02月12日号では、「第30回日本SF大賞−物故作家への意義ある賞」と題して、伊藤計劃「ハーモニー」を「反・禁煙ファシズム小説」として評価しているらしい。 元々このコラムは、2002年2月〜2003年1月まで「受賞作を読む」と題して連載。それが、2009年1月から隔月で再開。 2009年7月からは「受賞作にもう一言!」と改題され、毎月の連載になった。 「週刊誌での月1回連載」で、「基本的に毎月第1週号だが、掲載がずれることもある」という変則連載なので。猫猫先生ファンの人たちにもなかなか、目が届かないのだろう。 以下、連載再開後、ネット上で探せたコラムの「見出し」とその賞
豊崎由美@とんちゃん @toyozakishatyou ついでに「サイゾー」の宇野常寛さんの連載についても。宇野さんは「御用ライター」について書いているのですが、実名を挙げることなく、欄外にわたしがコミカレの講座生と一緒に作った「書評王の島」を出すことで〈ファンダムの中ボス〉の一人がわたしであることを匂わせています。 豊崎由美@とんちゃん @toyozakishatyou なぜ、宇野常寛さんは実名を挙げて、トヨザキのどこが御用ライターであるのか具体的な例とともに批判しないのでしょうか。そんな腰の引けた態度で〈ファンダムの中ボスに媚びずにやっていく、彼らに逆らっても仕事を失わない世界を作る〉とか威勢のいいことを書いても笑止。
『王立宇宙軍』の話をしよう。 『オネアミスの翼』という題名で87年に公開された映画だ。いや、なんでこんなタ イトルに変更されたかも色々あるんだけど(例えばバンダイのナベさんが『リイクニ の翼』というタイトルを口に出しちゃった、とか)、今回はその中の「お金」にまつ わる話。 当時、大阪でDAICONフィルムというアマチュア映画サークルをやっていた僕 は、たそがれていた。サークルの金銭問題の不祥事とか僕個人のプライベートなバカ 事とかが重なって、もう僕は誰も信じたくない気分。 監督の山賀君もたそがれていた。次に作る作品のアテもなく、なんか八方ふさがり な気分だった。 仕方なく、我々は毎日のように話し合った。 なんせそれしかすることがないもんだから、話し合いはいくらでも続き、架空の「次 期作品」への期待、というか掛け金は膨大になる一方だった。 「このまま終わったら、オレたちバカだぜ」
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