著: 嘉島唯 高田馬場の駅を降りると、一番最初に目の中へ飛び込むのがロータリーの中央島だ。学生の集団が常に数組いて、横断歩道は車と人が行き交う川みたいに見える。彼らの背景には、雑居ビルに掲げられた「学生ローン」の赤い文字がくっきりと浮かび、すぐ奥にはパチンコ屋とカラオケ店が並ぶ。 この風景を見ると、胃液が逆流する感覚になる。腹の奥底で消化したはずの何かが刺激されるのだ。 電車の通過音とタイヤが道路に擦れる音、四方八方から聞こえる笑い声。少しでも気を抜けば、波に飲み込まれそうになる。 街全体が煽ってくる。「社会に埋もれるな」「おもしろいヤツになれ」と。 入学早々、青春にくじけてしまった新歓 ロータリーの中央島。ここから見える「ビッグボックス」は街のシンボル的存在だ。黒川紀章が設計した 早稲田大学の合格通知を見たとき「選ばれたんだ」と思った。高校1年生から受験モードに生活を切り替え、勉強一色の