■若者の利害軽視する社会 死者7人を出した秋葉原無差別殺傷事件からまもなく2週間になる。 事件についてはすでに多くの報道が出ている。マスコミでは例によってネットやゲームの影響が強調され、家庭環境も注目を集めている。そこでおもに語られているのは、劣等感を抱えた未熟なオタク青年が「逆ギレ」して刃物を振り回した、という単純な犯人像である。 しかし、その見方は正しいだろうか。容疑者はネットで犯行を予告している。そこには、動機として社会への不満や疎外感が、表現の幼稚さはあれかなり明確に記されている。2日前に凶器を購入し、前日に現場の下見を行い、当日静岡から秋葉原まで長い距離を運転しているあいだも、容疑者は冷静さを失っていない。そこに窺(うかが)えるのは、暴力への衝動というより固い決意である。事件の本質は、暴力衝動や若者文化といった要素にはなく、容疑者が抱いた絶望と怒りの中身にあると考えるべきだ。 で