いま、秋田県から日本酒革命が起ころうとしている。一躍注目を集める5蔵が集まり、次世代を見据えた酒造りの研究会「ネクスト5」を立ち上げたのだ。その挑戦に、ノンフィクション作家の一志治夫氏が迫る。(前編:文中敬称略) * * * 乳酸が醸すまろやかな旨味とほんのりとした酸味、それでいて、舌にしつこく残らぬ香りの爽やかさ。かつてこんな鮮烈な飲み口の日本酒が存在しただろうか──。 2010年冬、秋田・新政(あらまさ)酒造の日本酒『No.6』が発表されると、飲食業界に衝撃が走った。数年経ったいまも、東京の有名飲食店や左党の間では『新政』の酒をいかに入手するかが話題となり続けている。「1人2本まで」などと販売制限を設けている酒販店も少なくない。 『新政』の大躍進に牽引されるかのように、『ゆきの美人』『一白水成(いっぱくすいせい)』『山本』『春霞』を送り出す秋田の4蔵も注目を集め、引く手あまたの状況が続