和田竜、新潮社 ☆☆☆ 舞台は戦国時代末期、織田信長によって包囲された大坂本願寺です。 瀬戸内海を航行する商船から通行料をとることで繁栄していた村上家の娘、景(きょう)20歳は粗暴で容姿が悪いため、この時代の基準からすると婚期を逃した娘と周りから見られています。 景も年頃の娘並みに男性への憧れはあるのですが、外見のせいで女性として扱われたことがなく、また本人もお淑やかにしているよりは、海に出て海賊働きしていることが性にあっているので、瀬戸内の海を海賊船に乗って所せましと暴れまわっています。 そんな景にとって気楽で愉快な日常にも少しずつ暗雲が立ち込めてきます。戦を華やかなものと思っていた景は、興味本位で大坂本願寺を攻略するために信長が築いた砦に潜り込むことに成功し、そこで本物の戦を目の当たりにするのですが、それは景の思っていた戦絵巻のなかのお話とはかけ離れたもので、参加する武将たちの私利私欲