例えばピンクの家を建てようとした移住者がいた。「青、赤、黄など原色を使ったイタリアの小さな港町が大好きで、真鶴にも合う」と思い込んでいた。独善の美でなく、周囲と調和する美を一緒に探そうと、卜部さんは提案した。議論を重ねるうちに、移住者は自分から赤い漆喰調の壁に変更した。 〇五年、景観法に基づく景観行政団体に指定され、条例を同法に合うよう変更した。その頃、マンションを巡る象徴的な出来事が続いた。 町の高さ制限が十メートルの地区で、高さ二十二メートルのマンションが計画された。県基準では建築可能で、業者は「町条例を守る気はない」とうそぶいた。町を挙げての騒ぎになり、最後は業者が断念した。 一方、町の高さ制限が十二メートルの地区では、基準を守り、外壁から植栽まで可能な限り美の基準に配慮したマンションができた。業者は美の基準に適合した物件であることを宣伝し、完売した。 条例は規制より、役場と業者が一