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ブックマーク / onboumaru.com (2)

  • 魔物の棲む家 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 かの国の晋王朝の時代のこと。 呉興ト申す地に百姓がつつがなく暮らしておりました。 この者には息子が二人ございまして。 どちらも周囲が羨むほどの孝行息子でございましたが。 ある時、二人の息子はこぞって畑を耕しておりました。 「おい、小二」 ト、兄が弟に切り出した。 「何です」 「お前、夕べのこと父さんに謝ったのか」 「夕べのこととは、一体何です」 弟はキョトンとして兄を見る。 兄はその態度に思わず、ムッと腹を立てまして。 「おい、白を切るとただじゃおかないぞ」 ト、弟をギッと睨みつけた。 「何のことです。さっぱりわけが分かりませんが――」 弟は困惑して、兄を見た。 「それなら、俺から言ってやろう。夕べ、父さんが俺の部屋に来た」 「それで」 「それで、だと。ますます忌々しい奴め。父さんが俺に言うじゃないか。小二が近頃、夜遊びがひどくて

    魔物の棲む家 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
  • 三尺の翁が顔を撫でる | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ただいま、徳川様の二条城が鎮座する地には。 もと、冷泉院(れいぜいいん)ト申す後院がございました。 後院ト申すは、上皇の御所でございます。 つまり、天皇の地位を退いた後の、終の棲家でございますナ。 さて、この冷泉院でございますが。 もともとは名を冷然院ト申しました。 ところが、度重なる火災のために。 何度も消失いたしましたので。 「然」が「燃」に通じるトして。 「泉」の字に改めたのでございます。 この冷泉院には、文字通りト申しましょうか。 泉ならぬ池がございました。 延喜年間に京の町の井戸が枯れました際には。 院を開け放ち、この池の水を誰にでも自由に汲ませたという。 陽成上皇がお隠れになった後。 この冷泉院の寝殿は、一条へ移されまして。 跡地はすべて町家となる。 池の周りにも人が住むようになりました。 さて、ある夏の夕暮れ時でございます。

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