ゴキブリはとてもいやなものだが、わたしたちには、あらためて考えておかなければいけないことがある。彼らは、危険を察知すると、逃げる習性がある、ということについてだ。やつらは逃げる。人間をこわがっているのだ。現時点では。わたしたちは、それを当たり前だとおもっている。しかし、これが仮に、逆だったらどうか。想像するだけでおそろしいことになる。 「人間を見ると、襲いかかってくるゴキブリ」 書いただけで、戦慄が走る。たとえば、台所で見かけたゴキブリ。ものすごいスピードで、こちらに向かってくる。がさがさがさ。足にかみついてくるのだ。そんなことになったら、わたしたちは、悲鳴をあげて逃げだすしかない。完全に立場逆転である。そろそろ、ゴキブリたちも、相談をはじめているのではないか。 「ひょっとすると、人間は、俺たちにびびってるんじゃないのか」 「こっちから、襲ってみるのはどうだろう」 「意外に、効果あるかもな
25歳までふらふら遊んでいた、ともだちの女の子が、ついに就職することを決め、職探しをしているところだという。彼女の話をいろいろと聞いていると、とても興味ぶかく、社会経験のあまりない子たちが、「就職をする」ということをどうとらえているのか、わずかだが、わたしなりに気がつくことがあった。 何社か履歴書を送った、というので、会社名を教えてもらうと、「COACH、プラダ、エスティーローダ」。その子にとって、就職がどういうものなのか、会社名だけでもなんとなくわかる。そういった、きらびやかな会社に入ることが、彼女にとっての自己実現であり、それ以外のよくわからない仕事をするのは、単なる苦役のようなものであるらしい。うーん。気持ちはわかるのだが、働くということに対するイメージが、すこし貧しいように感じた。世の中にはたくさんの仕事があって、どれもがそれなりにおもしろい。どんな仕事だって、やってみればけっこう
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