はじめに すでに成人していて、母国語をしっかりと身につけている外国人が、日本語を学習する場合に困難を感じる問題の一つに、「は」と「が」の使い分けの問題があると佐治圭三は述べている。その難しさの理由について、彼は次のように分析している。 「は」と「が」をも含めて、「助詞」と呼ばれる文法機能を担う形式が、日本語にはたくさんあって、それらが前後の語句を結びつけたり、いろいろな関係を示したりすることによって、日本語の文はでき上がっていくのであるが、外国語の多くは、助詞に相当するような形式をほとんど持たないか、持っていても日本語の助詞のあり方と違っていて、そのために助詞全体に対する理解が困難であることが基底にある。 だが、助詞の内部でも困難の度合いはそれぞれに異なっている。たとえば「と」や「から」といった助詞の用法は比較的やさしく、「だけ」よりは「しか」の方が難しいと言った違いがある。が、「が」と「