ど田舎に住んでいた小学生のころ、ジャッキー・チェンに夢中だった僕は彼の映画が公開されると、隣町にあった映画館に行っては朝から晩まで劇場に居座り続け、ジャッキーの映画を繰り返し見ていた(当時の映画館は入替え制ではなかった)。 ある日テレビで放映された『スネーキーモンキー蛇拳』を僕はかじりつくようにして目に焼き付けていた。ジャッキーよりも敵であるウォン・チェンリーの足技の美しさに惚れ惚れしながら。そんな時、父が僕の背後からこう言った。 「ブルース・リーには及ばないな……」 それまで『8時だョ!全員集合!』を見ていると「クレージーキャッツのほうが笑いに知性がある」などと、昔の番組を持ち出しては今でいうマウントを息子にとってきた父は、映画についても同じだった。 ビデオレンタルがいたるところに乱立した80年代後半のある日、『ヤングガン』のビデオを借りてきてリビングで見ていた僕の背後からまた父が言った