なぜいま「母」を描くか ――長篇小説『マザーズ』がいよいよ刊行になります。金原さんにとって初の連載小説でしたね。回を追うごとにドライブ感を増し、最終的に八百五十枚の大作となりました。 金原 連載を始めたころは、五百枚くらいのものになるかなと思っていました。最初は舐めるようにゆっくりと書き進めていったのですが、だんだんエンジンがかかって、一回あたりの枚数もどんどん増えていきました。それでも毎回数十枚は削っていたんですが。 ――『マザーズ』には、同じ保育園に子供を通わせている三人の若い母親たち、作家のユカ、主婦の涼子、モデルの五月が登場します。デビュー以来、若い女性の抱える狂気にも似た闇の深さを描いてこられた金原さんが、「母親」や「家族」を正面から描こうと考えられたのはなぜでしょう。 金原 やはり自分自身が「母になったこと」をどう捉えたらいいのかわからなかった、ということが、この小説を書いた一