イノベーションが生まれるかどうかは運次第――本書はそういった「思いこみ」を覆す一冊である。 主要著者のクレイトン・M・クリステンセン氏といえば、ハーバード・ビジネス・スクールの教授にして、「破壊的イノベーション理論」の提唱者として知られる。その彼が10年以上もの歳月を費やし、新たに打ち立てたのが、本書で紹介する「ジョブ理論」だ。 この理論の最大の特徴は、消費者によるプロダクトの購入を、「ジョブ(用事、仕事)を片づけるものの雇用」と見なすところにある。そのプロダクトがジョブをうまく片づけてくれたら、次に同じジョブが発生したときも同じプロダクトを「雇用」したくなるし、そうでなければ「解雇」したくなるというわけだ。 こう書くと、たんに親しみやすいメタファーに置き換えただけのように思えるかもしれない。しかし本書を読めばすぐに、この理論がきわめて実践的なビジネスツールだとわかるはずである。本書が明ら