「この最初のチャンスを逃さなかったところに、野村の良さがあった」 野村も先輩選手と一緒に門限を破り、鶴岡監督に叱られている。しかし野村は毎日、鶴岡監督と顔を合わせていた。野村はボールの個数を管理する担当で「今日は何個足りませんでした」と鶴岡の部屋に報告に来ていたのだ。 実直な野村に好感を抱いた鶴岡は、ハワイチームとのオープン戦で野村を先発で起用した。そこそこ投手をリードするし、打撃もいい。そして1年間捕手をしていなかったことで、痛めた肩も回復していた。 正捕手の松井淳は肩を痛め、精彩を欠いていた。南海はハワイ相手に10勝1敗と大勝したが後半戦は野村がマスクをかぶった。そして話は、「キャンプの収穫は野村だけ」という鶴岡監督の話へとつながる。 シーズンが始まっても松井淳が不調だったこともあり、野村は正捕手の座を手にした。そして翌57年には30本塁打で本塁打王を獲得している。 ハワイキャンプを張
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