パンダ貸します 記事の筆者と写真家が、取材現場から報告する「最高の経験」、「最悪の体験」、そして「最も風変わりな思い出」。 丸くてふっくらしたほっぺた。いつも昼寝しているかと思えば、餌をむしゃむしゃとほおばっては母親にまとわりついている。こんな愛らしい動物が、まさか巨額の取引や国際外交に利用され、人々の熱狂を浴び、政府や科学者の期待を一身に背負っているとは、ちょっと想像しにくい。だが、この米国生まれのジャイアントパンダの赤ちゃん「タイシャン(泰山)」は、まさにそんな1頭なのだ。 タイシャンは2005年7月9日の午前3時41分、米国のワシントンD.C.にあるスミソニアン動物園で生まれた。2000年12月に中国からやってきた雄のティエンティエン(添添)と雌のメイシャン(美香)との間に生まれた、初めての子供だ。米国にいるパンダはこの親子を合わせてわずか11頭。パンダの飼育には科学の粋が集められ、