車椅子に乗った76歳のおじいちゃんを、体格のいい男が3人がかりで階段の上げ下げをする。脳梗塞を患い、足はほとんど動かすことができない。おむつを着け、トイレも入浴も男たちに“介助”をされていた。 【画像】留置場での高齢化率 ここは介護施設ではなく、福岡市南区の福岡南署。おじいちゃんは5月5日、スーパーでの万引容疑で現行犯逮捕された。世話係は署留置管理課の警察官だ。 当時、留置場にはほかに十数人の容疑者がいた。「臭いっ」。トイレへ移動させるのが間に合わず、何度も便を漏らし、苦情が出た。桜の香りのお香をたき、消臭剤と空気清浄器も置いた。 刑法犯の5人に1人が65歳以上の時代。軽微な罪を繰り返す累犯も少なくない。逮捕した容疑者を一時置く留置場でも、10人に1人は高齢者。警察署はバリアフリーに程遠く、1974年開設の同署も例外ではない。介助が必要な高齢者や障害者を想定していなかった、という事情もある