インドに最初に誕生したイスラーム政権である 奴隷王朝 (1206-1290) に始まり、ハルジー朝(1290-1320)、トゥグルク朝(1320-1413)、サイイド朝 (1414-51)、ローディー朝 (1451-1526) と継起する王朝は いずれもデリーを首都とし、君主がスルタンを名乗ったので、これらを一括してデリー・スルタン朝と呼び、その 320年にわたって展開した 北インドのイスラーム美術を総称する。 西方からもたらされた美術・建築の技術と様式を摂取し インド化していった過程なので、その後の、インド・イスラームの爛熟期というべき ムガル朝の美術に比して、古拙な印象を免れない。出発点をなす メフローリ地区の クトゥブ・モスクは、取り壊したヒンドゥー寺院やジャイナ寺院の部材を用いて インドの伝統的な手法で建てたが、まだ真のアーチやドームの構法を知らずに 形のみを模倣した部分が多かった