オキーフさんとモザー夫妻のノーベル賞受賞以来、海馬に形成される外部世界の表象についての研究を紹介してきたが、外界の経験を内部イメージ化する過程は決して場所の記憶に限らない。おそらくほとんどの種類のエピソード記憶は同じ仕組みが使われていると考えられる。 実際、今日紹介しようと思っているロンドン大学からの論文の著者らは、2019年に、バラバラに提示されたイメージのセットから、最終的にそれぞれのセットの元になっている6種類のイメージが並んだ順番を、セットを見ながら推察する課題を学習したあと、同じルールに従う新しいイメージセットから、そのセットの背景にあるイメージの順番を構成し直すという課題が、ネズミの場所記憶での脳活動と同じように振る舞うことを発見した。すなわち、それぞれのイメージに対応する神経細胞の活動を脳磁図計で調べると、新しい経験をした後、ネズミの場所細胞で見られる脳活動と同じように、短い